1日目 spa resort with DIY punk spirit

十代後半から二十代前半、俺は『NoNewYorks』というパンクロックバンドを組む、荒んだパンクロッカーだった。どこからともなく沸き起こる日々のフラストレーションを曲にして、ギターやベースをがむしゃらに掻きむしり、意味のない歌をマイクに向かって叫ぶ。あとはただ、一晩でどれだけウィスキーを飲めるかとか、そんなことしか考えておらず、28歳になったらシドビシャスみたいに死ぬんだと思っていた。

なんて、調子に乗って大げさに書いた。

バンド名『NoNewYorks』の由来は、メンバー全員が入浴嫌いだったから。まあ嫌いというか、寿司屋で働いた後にたんまり酒を煽って酔っ払って家に帰ると、風呂に入るのが面倒だったというだけなのだが、ともかくみんな風呂に入ってなくて、酒と酢と生魚と頭皮の脂の匂いが混ざった『魔闘気』をいつも漂わせていた。

そんな俺でも、この旅を始めて2ヶ月以上湯船に浸かっていないと、さすがに日本の風呂が恋しくなる。特にコロンビア以降の赤道付近の中南米では、ホットシャワーすら出ないことが多い。いやそれ以上、樽に溜まった水をバケツでかぶるタイプ、つまりシャワーですらないこともあった。
ここは中南米。基本的に熱いんだから、水シャワーの方が気持ちいいのは分かる。湯船に浸かる習慣など、根付くはずもない。それに、電気も水も日本のように潤沢ではない。
そうだとしても、やっぱり温かいお湯に肩まで浸かりたい。冷たい水で洗いバッシバシになった髪の毛をタオルで拭う度、風呂への気持ちは強くなっていった。ああ、哀しいかな、日本人の性。

しかしそんな日本人の願望を、ここ中南米でも叶えてくれるのが、温泉。

世界一周婦人と俺が訪れたラ・フォルチュナは、アレナル火山国立公園の麓にある街で、街道沿いには火山の地熱を利用したスパリゾートホテルが立ち並んでいる。
ラ・フォルチュナ到着その日はすでに夕暮れで、ホステルで寝るだけ。そして本日二日目、本格始動。

街でレンタル自転車を借りて、18キロ先の湖に向けて出発。湖越しに火山を見たら綺麗かなーと思っていたのだけれど、期待した程の景観ではなかった。
湖で折り返して街道を戻り、側道に逸れて2キロ先のアレナル火山国立公園へ。火山自体は活動休止中なのは知っていたけれど、ここまで来ておいて見ずに帰る訳にもいかない。国立公園で片道2キロのトレッキング。山には雲がかかっていて、その全容を拝むことはできなかったが、綺麗な風景を楽しめたので満足した。

そして、温泉!!
ラグジュアリーなスパリゾートに入って、好きな時にビュッフェスタイルの食事を取り、後はダラダラとプールで泳ぐ、というのが一般的なツアー形式。
しかしそれは、自分達が求める『温泉』ではない。
自分達が選んだのは、そんなリゾート施設ではなく、天然の川!地元民と通なツアー客くらいにしか知られていない場所で、自然を堪能しながらゆっくりとお湯に浸かれる。正に川湯。そして何より、無料というのが嬉しい。
その川に着いたのは15時半。一歩その川に足を踏み入れれば、温かい水流で身も心もほぐれて腰が砕けそうになる。もくもくと湯気が立ち上がる水面をまたぎつつ進み、自分達の気に入った場所に到着すれば、あとは肩までとっぷりと浸かるだけ。ああああ…温かい。日本の温泉ではないので、さすがに全裸で入浴はできない。それでも、あまりに気持ち良すぎて、スイミングパンツのポケットにiPhoneを入れているのを忘れており、危うく水没破損するところだった。
と、ここまで『温泉』と書いてきたけれど、正確には『温泉』ではないらしい。よくわからないけれど、要は地中からお湯が噴き出すのが『温泉』で、ここのはどうやら温かい地面の上を川が流れて水も温もっている、言わば『温川』。なので、ラジウムとか何とかいった温泉的な成分もなく、それ特有の効能もないという。
しかし、そんなの関係ない。自然の中で天然のお湯に全身浸かる。しかもタダで。『贅沢』というサワはこんなところにあった!!

いつまでもここにいたい。そんな気持ちが湧き上がってくる。しかし婦人と俺は、ホステルに帰らねばならない。サイクリングレースのコースともなっている街道を10キロ走破して。カーブと坂が連続するただでさえ危険な街道が、暗くてさらに危険になる前に、ここを去らねば。シンデレラのような気分で川から上がり、自転車にまたがる。

17時半、せっかくお風呂に入ったのに結局汗だくになってホステルに帰る。
本日合計20キロのサイクリングと4キロのトレッキング。さすがに疲れた。疲れきった。しかし、自分達らしいDIYでパンクなリゾートライフを堪能できたと、婦人も俺も満足している。ビニパロパンクイェー!

ラ・フォルチュナにて自転車を借りて出発!残念ながら曇り空で、アレナル山は雲隠れ。

ラ・フォルチュナにて自転車を借りて出発!残念ながら曇り空で、アレナル山は雲隠れ。

アレナル国立公園へ。入口で見た青い鳥。二つに分かれたトサカが愛らしい。

アレナル国立公園へ。入口で見た青い鳥。二つに分かれたトサカが愛らしい。

アレナル山。現在は沈黙しているとはいえど、活火山なので登山は禁止されています。

アレナル山。現在は沈黙しているとはいえど、活火山なので登山は禁止されています。

ジャングルの中の秘密の温泉。日曜日なので地元の家族連れが沢山来ていました。ハチドリが飛び、川の水は澄んでいて、とっても良い雰囲気。

ジャングルの中の秘密の温泉。日曜日なので地元の家族連れが沢山来ていました。ハチドリが飛び、川の水は澄んでいて、とっても良い雰囲気。

極楽~♪

極楽~♪

 

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