2日目 ヘミングウェイ!

ハバナの街に帰ってきて2日目。

本日は珍しく曇り空。カーサを出発したのが朝8時、まずはハバナ郊外のサンフランシスコデパウラという町へのパブリックバスに乗るため、中心街へと向かう。
歩き出したとき既に小雨が降り出していた。しかしキューバの人々はみんな傘なんてさしていない。肌寒いけれど、もちろん半袖のTシャツ。世界一周婦人と俺は傘をさしてレインジャケットまで着ているけれど、きっとこの雨もどうせすぐに止むんだろうな、ー大げさな自分たちがちょっとかっこ悪いな、なんて思いながら歩いていた。
しかし、みるみる雨足は強まってきて、傘をさしてもレインジャケットを着ても、何の役にも立たないというほどの豪雨になる。世界一周婦人と俺は、大きな屋根のアーケード下を歩いて、あと少しでバス停というところまでたどり着いた。しかし、道が川のようになってしまい、立ち往生するしかなくなる。
10分、20分と、屋根から大量の雨水が、滝のように流れ落ちるのを眺めるばかり。鳴り響く雷鳴。気のせいか、日本の雷よりも低い音をしている?鼓膜をつん裂くような鋭い音ではなくて、体全体を巨大なローラーが踏みつけてくるような。
わずかに雨足が弱まったタイミングに、思い切ってアーケードの下から抜け出し、タイミングよく現れたパブリックバスに飛び乗る。運が良かった、なんとか無事に目的地にたどり着けそう!と、安心したのも束の間、突然バスの中に大量の水が流れ込んでくる!どうやらこの大雨は、街の排水処理能力を超えてしまっているらしい。それによってバスのルート上に出来た巨大な川を、今まさに通過しているらしい。おいおい、それはただの雨水じゃない、あの野良犬や馬車馬の糞尿を存分に溶かした水だろう?勘弁してくれよ、と思わずため息を漏らしつつ、足を高く持ち上げてやりすごす。

バスが自分たちの目的地であるサンフランシスコデパウラに到着した頃に、ちょうど雨は止んでくれた。婦人と俺がこの郊外住宅地にやってきたのは、20世紀最大の小説家ヘミングウェイの邸宅跡地にある博物館を訪れるため。
この博物館は、彼がかつて住んだ邸宅をそのまま保存利用したもの。なので、彼の書斎やクローゼット、リビングやダイニングやバスルームまで、当時のままの彼の生活風景を垣間見ることができる。
そう、垣間見る。実はこの博物館、観光客は中には入れない。ヘミングウェイの邸宅を、窓から覗き込むだけ。最初はそんな博物館イマイチなんじゃないか?と思っていたんだけれど、これが意外なほどに楽しめる。
本来、観光客が展示物に触れないよう設置されたポールやロープって、そこにはないもの。また、お互い様とはいえ、一緒に展示物を見て回る観光客も、そこにいるはずのない人々。例えば、古めかしい宮殿の一室で、カメラぶら下げた観光客がロープの前に並んでる風景って、実はすごく違和感がある。はっきり言えば感情移入できない。
確かに、あのまま雨が降り続いていれば見学どころではないので、天候次第では最悪な展示かもしれない。しかし自分たちは幸運にもヘミングウェイの生活感、空気感、世界感をそのまま感じ取ることができて、とても面白かった。

ヘミングウェイ博物館の後は、一旦バスで中心街へと戻り、別のバスに乗って再び郊外へ。
次なる目的地は、そのヘミングウェイがいつも釣り船を出していという港町、コヒマル。
パブリックバスの終着駅からコヒマルへは、徒歩で数キロある。これがキューバでなければ危険なスラム街にしか見えないであろう黒ずんだ没個性的な集合住宅を通り抜けて、東へ東へ歩く。
婦人と俺がコヒマルに到着したのは、16時過ぎだったろうか。実はここが、ヘミングウェイがノーベル賞を受賞するきっかけとなった作品『老人と海』の舞台。
今朝の豪雨の影響だろう、海は相当に濁っている。町は作品を読んで感じていた通り、小さくて静か。レストランは作中にも出てくる『ラ・テラサ』、他にも数件あるようだけれど、どの店も閑散としている。
町の端っこには小さな公園があって、地元の少年達が自転車で遊んだりバスケットボールしたりして遊んでいる。その公園に、穏やかに微笑みながら空を見上げるヘミングウェイの胸像がポツンとあった。

もっと観光整備すればいいのに、と思わなくもない。ヘミングウェイ作品愛好家は今でも多いだろうし、その代表作の舞台ともなれば観光客が押し寄せてもしかるべき場所。にも関わらず、まず交通アクセスが悪い。ヘミングウェイの船のレプリカでも浮かべればみんな乗るだろうけど、そんなものもない。購買意欲をそそるようなお土産屋さんもないし、ちょっと一息つきたくなるようなカフェもない。なーんにもない。
しかし、だからこそ来た甲斐があったとも言える。ヘミングウェイが描いた世界は、まさにこんな感じなのだから。作品中に出てくるレストラン『ラ・テラサ』も、あくまでちょっと小洒落たレストランという感じが、小説の世界感を崩してなくて良い。価格的にも、中心街よりよっぽど良心的。ヘミングウェイコース10000円、老人と海コース8000円とかではなく、パエリヤ700円、海鮮ライス360円とか、そんな程度。
アメリカと国交回復すれば、自分が考えたような商業主義的な町になってしまうんだろうな。この小さくて静かな町が、脚色過剰になる前に来れて良かった。

バスに乗って中心街へ帰り、徒歩でカーサへと戻る。道中、『サンティアゴデクーバ』というラム酒の小さなボトルとコーラを買う。
そして自分たちの部屋でクバリブレを作って飲む。めちゃくちゃ美味い。日本では入手困難なラム酒に満足。また、キューバ産のコーラが驚くほどラム酒、いや『ロン(現地風に)』に合う。コカコーラやペプシではこれほど美味くはならないだろう。さらっと飲み干して、酔っ払って寝てしまった。

土砂降りの雨に立ち往生。

土砂降りの雨に立ち往生。

家の門から玄関まで100m程歩きます。生前は6本指の猫を愛したという彼。今は屋敷周辺を犬がうろうろ。

家の門から玄関まで100m程歩きます。生前は6本指の猫を愛したという彼。今は屋敷周辺を犬がうろうろ。

窓から覗くスタイルの美術館。彼が狩ったものか、熊やバッファロー、鹿の剥製がどの部屋にもあります。

窓から覗くスタイルの美術館。彼が狩ったものか、熊やバッファロー、鹿の剥製がどの部屋にもあります。

クローゼットの服や、どこの部屋にもずらりと並んだ本(トイレにまで本が!)巨大なスピーカーにレコード、洗面所に置かれたクシ…それらが動かされずにそのまま展示されていて、今でもそこに彼が住んでいるかのような空気を感じることが出来ます。

クローゼットの服や、どこの部屋にもずらりと並んだ本(トイレにまで本が!)巨大なスピーカーにレコード、洗面所に置かれたクシ…それらが動かされずにそのまま展示されていて、今でもそこに彼が住んでいるかのような空気を感じることが出来ます。

静かなコヒマル。私の中ではコヒマルは小さな漁船が沢山並んでいて、ボロボロの桟橋に網とかカゴとか並んでいて、船員達がタバコ吸っていて…というイメージでした。ここは港もなく、ただハバナでは感じない強い潮の香りがします。

静かなコヒマル。私の中ではコヒマルは小さな漁船が沢山並んでいて、ボロボロの桟橋に網とかカゴとか並んでいて、船員達がタバコ吸っていて…というイメージでした。ここは港もなく、ただハバナでは感じない強い潮の香りがします。

テラス軒にて夜ご飯。ここでも彼の特等席は、角の一番景色が良いテーブル。その特等席の横で夜ご飯。

テラス軒にて夜ご飯。ここでも彼の特等席は、角の一番景色が良いテーブル。その特等席の横で夜ご飯。

今夜はラム酒で酔っ払う。

今夜はラム酒で酔っ払う。

 

 

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