1日目 サンティアゴ

窓の外に広がる平原
その先に続く地平線
開けはなつカーテン
日差し降り注ぐ晴天
眠りから覚めた青年
閉じてまた開く視線
目の当りにする霊験
新世界に掲げる聖典
霜六歩 全集1 『岳譜』より
プエルトモンからチリの首都サンティアゴに向けて、14時間のバス移動の最中。いつもの長距離バスでの夜明けと一緒で、誰ともなく起き出して、なんとなく1日が始まる。
窓の外にはぼちぼちブドウ畑がちらほら。思えばエルカラファテからバリローチェ、プエルトモンからここまで来て、すっかり景色は変わった。岩と砂が折り重なった荒野は、森を過ぎて海を走り、今は首都を取り囲む山並みの中。
高速道路を走るバスは路肩で停車し、ビスケットとジュースが振舞われる。朝食ということだろう。格安のバス会社だったので、そんなもの期待してなかったから、いかにも駄菓子といった雰囲気のビスケットでも嬉しかった。ジュースは桃の味。こちらでは桃がよく取れるらしく、これまた安っぽいジュースだけれど十分に美味い。あとスモモ。これはバスで配られたのではなく、自分たちで買って持ち込んだもの。エルチャルテン以来、毎日のように食べ続けているこの禁断のジュルジュル果実、もうすぐお別れだなんて、今はまだ考えたくもない。
朝食を食べ終えてしばらく経ってもバスは動かない。バスの通路を行ったり来たりする他の乗客たち。最初は、立ちションでもしに行ってるのかな?と思っていた。しかし次から次へとバスを出て、バスに戻って来ると今度は荷物を持って出て行きそのまま帰って来ない。どうやらバスは、朝食のために止まっているのではなく、故障のために止まっているらしい!
次から次へとバスを出て行く乗客は、他のバスを呼び止めて乗り込みサンティアゴへと去って行く。バスごとヒッチハイクかよ、すごい国だ。なんて、関心している場合ではない。自分たちもその流れから取り残されないように、故障したバスを降りて、呼び止めたバスでサンティアゴへと向かう。それにしても、みんな慣れている。ヒッチハイクする乗客も、それを受け入れるバスも。乗り込んだ新たなバスでは、別途料金を支払う必要なし。故障することが当たり前、ということでは困るけれど、助け合うことが当たり前、という精神は見習うべき。
 
そんなこんなはあったけれど、予定よりさほど遅れることもなくサンティアゴ到着。ホステルへチェックインし、市内観光。
サンティアゴでの目的、というのは特になかった。ガイドブックを見ても面白そうな記事はなく、盆地にある大都市だから空気も悪いとか、それほど興味を誘う話は聞いたことがなかったので、インターネットで情報収集して今後の旅の予定を立てるとか、そんなことしかするつもりもなかった。
しかし、行ってみたら案外悪くない。ホステル周辺はとても静かで住み心地も良さそうだし、さすがにブエノスアイレスには劣るけれど、中世ヨーロッパ風のコロニアルな街並みの雰囲気もなかなか。
それに、市街中心にあるベガ市場と中央市場は、予想以上に楽しめた。ベガ市場は、まさに市民の台所といった感じで、肉、野菜、駄菓子、金物、ペットフード、なんでも売っている。
世界一周婦人と俺は、ここでコンプレートイタリアーノとポトフ、豆スープを食す。ポトフと豆スープの正式名称は失念。まさに素朴な市民の味って感じ。コンプレートイタリアーノとは、イタリア風のホットドッグということになる。何がイタリア風かというと、ホットドッグにトマト、アボカド、マヨネーズが乗っていて、イタリア国旗の色をしているから。これがなんとも言えず美味い。アボカドが惜しげもなくたっぷり乗っかっている以外は『特に何にもこだわってませんけど。』みたいな感じが大衆的で味わい深い。また、これから先、自分たちの旅におけるアボカドの登場回数も減るんだろうな、なんて考えると、なおさら味に加点がある。
市場を出て、目の前にある店でソフトクリーム『バニャード』を食べる。バニャードとは、直訳すれば、『お風呂に入った』みたいな意味になるんだと思う。つまり、冷たいソフトクリームを熱々でドロドロに溶けたチョコレートに漬けたもの。ソフトクリームの冷気で溶けたチョコレートが固まり、パリパリチョココーティングソフトクリームとなる。これが目からウロコの美味しさ。チョコバリのアイスクリームなら日本でもあるけれど、チョコバリのソフトクリームは初めて食べた。なんで誰も日本でやらないんだろう?この、簡単なことなのにまだ誰もやっていないアイデアなところがすごく気に入って、俺は『明日も食べたい!』とアピールしたのだが、『高いからダメ。』と婦人の一蹴を食らう。
そして、中央市場。ここはベガ市場とは打って変わって観光客相手がメインの市場。しかし新鮮な魚介類もたくさん並んでるし、地元料理の食堂もたくさんある。『パステルデチョクロ』というグラタンに似た料理が有名で食べてみたかったのだけれど、お腹いっぱいだったので諦める。
 
スーパーに寄ってからホステルに帰る。本日の宿は、経営こそアメリカ人(?)だけれど、集まる宿泊者はほとんど日本人なので、『日本人宿』と呼んでも障りないだろう。
ラテンアメリカ最後の街で自分たちがこの宿を選んだのには理由がある。
まずは、両替し過ぎて余った各国通貨の処分。サンティアゴで出会う日本人なんて、ほとんど世界一周系の長期旅行者。互いに手数料抜きで手っ取り早く良いレートで不要な通貨を両替しあえる。自分たちはここで、アルゼンチンペソとパラグアイグアラニーを売って米ドルを入手。
そして、これはラッキーだったのが、メキシコ以来持ち歩いていたシュノーケリンググッズの処分。メキシコ、ガラパゴスで散々使ったけれど、何となくもったいなくてパタゴニア通して持ち歩いたコイツら。当然、パタゴニアなんてシュノーケリングできる場所じゃない。ただでさえ持って歩けるものは限られた我ら旅人なのに、重量はともかく、バッグのスペースを我が物顔で大幅に占領する連中と毎日顔を合わせていると、怒りすら湧き上がってきて、何度となく投げ捨ててしまおうとした。
しかし、プエルトモンでサーモンを差し上げた旅人夫婦の西さんが、自分たちより一足先に同じホステルにいらっしゃっていて、これからイースター島(モアイで有名なアレ。サンティアゴの空港が観光拠点となる。)に行くという旅人さんに、我々が近いうちに行商に来る旨をお声がけしてくださっていた。なので、両替成功で恍惚とした気分の自分たちに向かって、二階の棚からイチゴ大福が落ちてきて口にホールインワンするかのように、『シュノーケリンググッズ売ってください!』と、向こうから声がかかって買い取ってもらえた。売った自分たちも買った旅人さんもハッピーなやり取りができた、何より捨てられずに済んだアイツら、守られた地球環境を思うと、本当に今まで我慢して持ち歩いて良かった…と感無量だった。
それにしても、田中さんに頂いたサーモンが始まりのご縁。アレがなければ西さん夫婦に声をかけることもなかったろうし、両替もシュノーケリンググッズ処分も上手くいかず、今頃、各国通貨はほとんどただの紙くずに、シュノーケリンググッズは丸のままゴミくずとなってしまっていたかもしれない。降って湧いたような幸運は、独占するもんじゃない。誰かと分かち合ってさらにその価値を増す、ということを身を以て体験した。
 
消化試合的にインドア生活を送る予定だったサンティアゴ。食べ歩きも日本人宿も、十分すぎるほどに満喫した世界一周婦人と俺なのだった。
ベガ市場で食べた安食堂街の黄色いお豆のスープ。

ベガ市場で食べた安食堂街の黄色いお豆のスープ。黄色いのはカボチャの黄色。ニンニクが効いていてパンに良くあいます。

コンプレートイタリアーノ。安っぽいパンにソーセージなのに、惜し気もなくたっぷりと乗ったアボカドと、酸っぱさがなくクリームのようなマヨネーズを乗せるとあら不思議、めっちゃ美味いやないかい!

コンプレートイタリアーノ。安っぽいパンとソーセージなのに、惜し気もなくたっぷりと乗ったアボカドと、酸っぱさがなくクリームのようなマヨネーズを乗せるとあら不思議、めっちゃ美味いやないかい!

地元の人が並んでいるので何かと思って寄ってみるとソフトクリーム。

地元の人が並んでいるので何かと思って寄ってみるとソフトクリーム。

断面図。チョコ自体が美味しい上にパリパリなチョコと一緒に食べるソフトなアイスが美味しい!日本でも売り出して頂きたいです。

断面図。チョコ自体が美味しい上にパリパリなチョコと一緒に食べるソフトなアイスが美味しい!日本でも売り出して頂きたいです。

 

Advertisements

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out / Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out / Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out / Change )

Google+ photo

You are commenting using your Google+ account. Log Out / Change )

Connecting to %s