2日目 ブルーモスクからアヤソフィア

寒い。

世界一周婦人と俺がこの旅に出た時、日本は夏だったし、この旅はずっと冬を避けるように移動してきた。もちろん、標高が高かったり南緯の緯度が高かったりして寒いということは今までにもあった。しかし、まさかトルコが、緯度も標高も低いイスタンブールが寒いだなんて、考えたこともなかった。なんなら真冬だって薄手のシャツで十分過ごせるくらいの気候だろう、という意識すらあった。だから、4月にもなれば汗ばむ日もあるくらいじゃないかと、完全に油断していた。
それが、寒い。夜は、寒すぎて、ダウンジャケットを着て、ホステルのベッドに備え付けてある毛布にくるまっても、まだ寒い。結局あまり深く眠ることも出来ずに朝が来て、目が覚めてしまった。
昨日と違って、今日のイスタンブールは晴れ。まずは『ブルーモスク』の名で知られるスルタンアフメットジャーミーへ。
ここの寺院に限ったことではないけれど、まずその丸い半球体の屋根に、目を奪われる。日本人にとって屋根といえば、三角屋根がスタンダード。特にお寺や神社の屋根となれば、その三角屋根が反り返るくらい。しかしここでは半球体。もう、屋根の形が違うだけで異国情緒、テンションも上がる。
中に入ってみて、なお驚き。天井が高い。外観からしてビル10階建くらいはあるから、どんなに豪華に天井を高く作っても3階層くらいはあるだろうと思っていた。しかし、なんと単層。その天井までの数十メートルの壁には無数の窓が設けられていて、教会内に純粋な自然光が差し込んでくる。そして全面に描かれた幾何学的な模様。花がモチーフなんだろうか?この巨大な教会の内部を見渡す限りに、一つ一つの柄が繊細に描かれ、それが見事に調和している。
日記には特に触れなかったのだけれど、アフリカの村でも小さなイスラム寺院は見かけた。地元の人々が通うだけの、日本的に言えば 『村の鎮守』みたいな雰囲気なので、中に入るのはさすがに気が引けた。
そんな小さなイスラム寺院を遠目に見るだけでも、『おお、異文化!』と面白がっていたくらいだから、かつて世界最大規模だったイスラム教帝国の首都の、その中でもトップクラスにゴージャスなモスクを見れば、感動しないわけがない。そして大きなお世話ながら、アフリカの小さなモスクに対しては、『…ありゃスッポンだったなぁ。』と思わずにはいられない(もちろん規模や装飾に対してです)。
ブルーモスクを出て、次に向かったのは地下宮殿。
ここは、簡単に言えば地下貯水池。皇帝がここで寝食してたとか、高官が外国使節団と宴会していたとか、そういう場所ではない。
では何故に宮殿と呼ばれるかといえば、その巨大さだろう。目測で幅40メートル奥行き100メートル以上あるだろうか?高さも2階〜3階建くらいはある。身をかがめて潜り込む洞窟という規模ではない。
そして、そんな巨大な空間を地下で支える、石柱が立派。丸く整形された太い大理石の柱が、100本以上並んでいる。文字通り陽の目を見ない地下の貯水池に、わざわざ大理石の柱を使うなんて、もったいない!とすら思えてくる。ただしこの石柱、この貯水池のために造られたわけではなく、通常の宮殿やら神殿に使うべく造ったのだけれど、残念ながら売れ残ってしまった在庫処分品がかき集められたものらしい。だとしても豪華。自分なんから『大理石』という響きだけで『高級品』というイメージを抱いているのに、この辺りでは、捨てるほどあったという事だろうか。
真っ暗で広大な空間、柱はライトアップされ、オレンジ色に光っている。その光が水面に反射して、ただの貯水池とは思わせない神秘的な雰囲気を醸し出している。たくさんの人が行き来してるけれど、妙に静か。神秘的な雰囲気ゆえに、みんな小声になってしまっているのかも。
しかもこの地下宮殿、なんと4〜6世紀に造られたものらしい。下手をすれば日本人はまだ文字すら知らないような時代に、こんな巨大な貯水池を地下に作ってしまうなんて。1500年近く前の地下建造物が現存している、という事実も驚き。
地下宮殿の一番奥には、石柱の礎石となったメデューサの頭の彫刻が2つある。
メデューサは古代神話の登場人物で、蛇の髪の毛を持ち、目があった人を石に変えるという特殊能力を持つ。恋敵に首を斬られたり、特殊能力ゆえに想う人から戦争利用されたり、ちょっと哀れを誘う経歴の持ち主らしい。この地下宮殿で彼女は、邪悪な外敵を追い払う『鬼瓦』的に使われているという。『守り神』といえば聞こえはいいが、結局のところ未だに彼女の霊は慰められてない感じがして、やっぱり哀れを誘う。
地下宮殿を出て、次はグランドバザールへ。イスタンブールで歴史の深い市場らしいのだけれど、今や観光客相手の市場と化してしまっており、特に面白くはない。金銀宝石の装飾品、スパイスやお茶、ターキッシュデライトと呼ばれる蜂蜜を練って造ったお菓子、ランプ、水タバコ。と、書き出して見ればなかなか異文化な感じがするんだけれど、商売っ気ムンムンで客引きしてくるし、高いし、どの店も同じ品揃えだし、すぐに飽きる。地元の人々の生活感を味わおうとか、掘り出し物を探そうとか、屋台で食べ歩きしようとか、我々が求めるような市場の楽しみは味わえない。
グランドバザールを出て海に向かう。たまたまそこにあったエジプシャンバザールという市場を通って行く。まぁこちらの市場も、さほどの面白みはなし。
海まで出た目的は、イスタンブール名物のサバサンドを食べるため。
イスタンブールは周囲を海に囲まれているので、海産物も豊富。旧市街と新市街を隔てた海峡をつなぐ橋の上では、たくさんの地元民が釣り糸を垂らしている。
その橋を渡ってサバサンドの屋台にたどり着く…と、その前に、ムール貝のドルマの屋台を発見!ドルマとは、お米やひき肉の詰め物のこと。トルコではナスのドルマやパプリカのドルマがポピュラー、日本で食べるピーマンの肉詰めやロールキャベツも、ドルマが由来だと言われている。
ムール貝のドルマはもちろん、ムール貝にお米を詰めて炊き込んだもの。詳しい調理過程はどうなるのだろうか?貝の身が崩れてないから、生の貝を開き、お米を詰めて、貝殻を縛るか何かして閉じ、炊き込むのだろうか。いずれにしてもなかなか手間のかかる料理だろう。それにレモンをひと絞りして口に放り込めば、爽やかな海の香りが口中に広がる。もう、日本人なら嫌いなわけがないであろう味わい。5個でも6個でも食べたいくらいだった。
そしてようやく本題のサバサンド屋台。鮮魚を扱う路面店の先の小道には、サバサンドを売る屋台が左右に所狭しと並んでおり、これでもか、というくらいに客引きしてくる。値段はどこも変わらないから、一番大きくて美味しそうなサバを焼いている屋台でお目当を購入。
サバサンドの中身は、もちろんサバと、レタス、玉ねぎ、トマトなどのサラダが挟まっている。味付けはおそらく塩と、赤唐辛子と、ワインビネガー。店によっていくらかアレンジは違うと思われる。
正直、もっと『目からウロコ!」な斬新な味を期待していた。どういう経緯か忘れたけれど、俺は10代のころからこのサバサンドが食べたくて食べたくて、トルコに来たくて仕方なかった。しかしそんな積年の夢もいざ蓋を開けてみれば、何のことはないサバと野菜を挟んだサンドイッチ。素材の味を足し算しただけの料理で、世界中で再現可能と思われる。
まぁ美味かったんだけれど。でも世界三大料理の名誉を冠するトルコの国民食というくらいだから、もっと『何を使ったらこんな味になるんだろう?』というドキドキを思い描いていたから。昔好きだったアイドルが、近所で喫茶店始めたおばちゃんだった、みたいな、なんかちょっと酸っぱい気持ちになった…のはビネガーのせいだろう。まぁ美味しかったんだけれど。
そんな昼食を済ませた後、アヤソフィア教会へ。
ここは、なんと西暦300年代からある教会だそう。建築当初はキリスト教の教会として造られたのだけれど、戦争による火災や支配国家の変更などによって紆余曲折を経たものの、現在まで残存する、イスタンブールという街の歴史の証人。
レンガを使ったほんのり赤い外観が、朝に訪れたブルーモスクと対照的。内部の装飾もまた、金色に輝く背景にキリストやマリアのフレスコ画が描かれ、他のイスタンブール建築と一線を画している。現在イスタンブールは、もちろんイスラム教国家トルコの首都。しかしかつてはここがキリスト教の一大拠点であったことを、再確認させられる。
かつてこの教会のフレスコ画は、漆喰に塗りつぶされていたそう。まぁイスラム教最大級の帝国だったのだから、トルコの皇帝がキリスト教のフレスコ画を眺めつつ『綺麗だなぁ』なんて言わないのは当たり前なのだけれど、現代の人々は漆喰を剥がし表れたこのフレスコ画を見て、どのように感じているんだろうか?『憎き異教徒どもの崇める邪悪な偶像!』って思う?中にはそんな人もいるのかも知れない。しかし教会の保存修復状態を見ると、『この街はかつてはキリスト教の本拠地だった』ということも、自分たちのアイデンティティーとして受け入れているように感じられる。日本人として、キリスト教とイスラム教の関係というのは、対立構図をもって教えられてきたので、ああ、むしろこれが当たり前の関係なんだなと、なんだか腑に落ちた気がした。
夕食は今夜も自炊。南米から未だに持ち歩いているお米の、在庫処分料理。
ブルーモスクへ。

ブルーモスクへ。現在もモスクとして使用されているので、入場にはスカーフの装着が必要です。

目を奪われるきらびやかな装飾。高い高い天井。

入ってすぐ目を奪われるきらびやかな装飾。高い高い天井。

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そして、繊細なステンドグラス。

そして、繊細なステンドグラス。

地下宮殿。

地下宮殿。

メデューサ2人がいるのは地下宮殿を支える柱の根本。しかも一人は逆さま、一人は横倒し。当初は体積した泥に埋まっていたとか。見つけた人はさぞ驚いたろうと思います。

メデューサ2人がいるのは地下宮殿を支える柱の根本。しかも一人は逆さま、一人は横倒し。地下宮殿が発見された当初は体積した泥に埋まっていたそうで、見つけた人はさぞ驚いたろうと思います。

トルコといえば、シミットと呼ばれるごまのパン。ごまが香ばしくて美味しい。

トルコといえば、シミットと呼ばれるごまのパン。たっぷり着いたごまが香ばしい。

ざくろジュースは酸っぱくって、味の濃いケバブに良く合います。

ざくろジュースは酸っぱくって、スパイスのきいたケバブに良く合います。

ハチミツをたっぷり使ったトルコデライト。モチモチっとした触感で、ピスタチオやお砂糖を塗してあります。甘くって

ハチミツをたっぷり使ったトルコデライト。モチモチとして、ナッツがずっしり入っていて、とっても甘いです。

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ケバブ屋さんといえば、必ずある飲み物、アイラン。飲むヨーグルトのような甘いものを期待して飲んでみてびっくり、さっぱりしたチーズのような味。私はクリームチーズの味に似ていると感じました。

ムール貝に入ったピラフ。レモンを絞って頂きます。貝に詰められて売られている面白さ、海の旨味が詰まったピラフ、こりゃ、文句無しに美味!

ムール貝に入ったピラフ。レモンを絞って頂きます。貝に詰められて売られている面白さ、海の旨味が詰まったピラフ、こりゃ、文句無しに美味!

私達が見る限り一番大きなサバを焼いていたサバサンド屋さん。

私達が見る限り一番大きなサバを焼いていたサバサンド屋さん。

鯖サンドは期待通りの、期待を超えない味でした。

鯖サンドは期待通りの、期待を超えない味でした。

ガラタ橋にて。

ガラタ橋にて。

アヤソフィアへ。

アヤソフィアへ。

アヤソフィアで驚かされたのは繊細なモザイク画。モザイク一つ一つのブロックの大きさは1cm平方ほど!

アヤソフィアで驚かされたのは繊細なモザイク画。モザイク一つ一つのブロックの大きさは1cm平方か、それよりも小さいほど!

キリストの頬は肌色から桃色のグラデーション。ブルーの服も1-2色ではなく、3色以上の青色を使って、その服の立体感を表現しています。

キリストの頬は肌色から桃色のグラデーション。ブルーの服も1-2色ではなく、3色以上の青色を使って、その服の立体感を表現しています。

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そんな作るのに恐ろしく時間がかかりそうなモザイク画が、巨大なドーム中に。

そんな作るのに恐ろしく時間がかかりそうなモザイク画が、巨大なドーム中に。これらが漆食にて隠されていたということも驚かされます。

コンスタンティノープルが陥落し、統治者が変わった後も、これらのモザイク画を破壊するのでなく漆喰で塗り潰したのは、モザイク画が異教徒の目にさえも美しく、永遠に失われるのを勿体ないと思ったからかもしれません。

 

 

 

 

 

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