2日目 ラマとの縁に恵まれて

チベット仏教の修行僧達が集まる村、ラルンガルゴンパ。

標高は4000メートルを超え、11月半ばでも朝晩は凍てつく寒さとなる。

朝食は、昨日も行ったラロングレストランという食堂で、包子(肉まん)とおかゆを食べる。中国、正確に言うと漢族の定番朝メニュー。ラルンガルゴンパは中国国内ではとても有名な僧院なので、漢族の出家者も相当に多いらしい。ただし、包子の中身は肉ではなく野菜。僧侶のためにアレンジしてある。

昨日は、ちょっとした夫婦げんかみたいな形で別行動を取った世界一周婦人と俺。鳥葬から一人帰ってきて、婦人とホテルのロビーで再会した俺は、てっきりまたそこで口論にでもなるかと思いきや、意外にも温和な表情で『ゴメンね』と婦人から謝罪されたもんだから、何だか狐につままれたような気分になった。

『実はね、こうちゃん。』

その先に続く婦人の言葉に、俺はさらに驚かざるを得なかった。

曰く。

俺に置いてけぼりにされた婦人は、いつものように絵でも描こうとプリプリしながら(ここは俺の想像)村を歩いていた。すると、後に『インプー(圓布)』という名だと分かる、一人の尼さんに声をかけられた。彼女とは言葉が通じなかったんだけど、どうやら付いておいでと言われているらしいので、思い切って付いて行ってみると、なんとそこはラマ(チベット仏教の高僧、指導者)の館で、ラマと面会できたんだという。

ラマの館には、英語の話せるお手伝いさんがいて、ラマとの会話を取り持ってもらい、ラマからチベット名やお守りの数珠までもらって帰ってきた、という話。しかもその後、インプーと共に『インファン(圓皇)』という尼さんのお家へいって(インファンは英語が話せる)、『あなたはどの観音菩薩が好き?』みたいな尼さん女子トークを楽しんできたらしい。

『明日も是非またいらっしゃいよ、旦那さんも一緒に。お昼ご飯をご馳走するから!』と、インファンからありがたいオファーを受けて、昨日、ホテルに帰ってきてたんだという。

ということで、本日、なんとラルンガルゴンパの尼さん、インファンのお宅で昼ご飯を頂戴することとなった世界一周婦人と俺。

11時半、バラック(あえてこう表現します)の戸を叩くと、インファンとインプーが満面の笑みで我々を迎えてくれた。ちなみに、本来なら男である俺が尼さんのお家に伺うのはご法度。しかし今回は夫婦一緒だからということで、オッケーしてもらえた。なんとも有難い、稀有な体験。

『どんどん食べてね!』

食卓に並ぶのは、中華料理では定番の、卵とトマトの炒め物、ダイコン?類のキンピラ、豚バラ肉っぽい形、色、食感をした大豆由来であろうものの炒め物、それに雑穀の混ざったごはん。どれも美味い。肉を使っていないとは思えないほどのパンチとボリューム。特に、豚バラ肉っぽい炒め物が、食べたことない味で面白かった。あ、ちなみに卵は、僧侶の中でも人によって食べる人と食べない人に分かれるらしい。彼女達も、もしかしたら普段は控えてるのかも知れないけれど、きっと我々のために張り込んでくれたんだろう。

ごはんの後、どうやって五体投地するの?とかそんな話をちょっとだけしてから、今日もまた(俺は初めてだが)ラマの館へ連れてってもらう。ちなみに今日は、英語が話せるインファンに。インプーはお家でお片づけしといてくれる、とのこと。何から何まですみません。

ラマの館に到着すると、すでに人だかりが出来ていた。門の外で、インファンにラルンガルゴンパのこととか日々の生活のこととか聞きながら待っていると、程なくして若い僧侶から入館を許される。

『あー、私は何回もラマに会ってるけど、未だに緊張するのよ!』

とインファン。しかし館の雰囲気は、少なくとも俺が想像していたよりはカジュアル。薄暗い室内にろうそくの光が揺れて…みたいな感じではない。イメージしやすいように例えるなら、郊外にある大学のゼミの教授の自宅のサンルーム、みたいな場所。

まずはラマの唱えるお経を拝聴。そして、言葉が分からないので確かではないけれど、法話的なものがあったのかも知れない。

その後、質問タイム。

『せっかくのチャンスなんだから、逃しちゃダメ!』とインファンに前々から言われていたし、俺は結構色んな質問をたくさん用意していた。しかし今日は、何だか特別な御利益のある日だそうで、訪問者が多い。なので、一番シンプルで、一番聞きたいひとつに質問を絞った。

『より良く平和な世界のために、自分たちはどうすれば良いか?』

ちょうどここを訪れる少し前に、イスラム過激派によってパリがテロ攻撃を受けたばかり。しかも、そのことに追悼の意を表してフェイスブックのプロフィール写真にトリコロールを重ねたら『世界各地でパリ以上にたくさんのひとが死んでるのに、先進国でテロがあった時だけ大げさに悲しんで…』みたいな論争があったり。

戦争やテロも悲しい。

しかし、自分の無力を嘆くべき人々が、小さくとも新たな争いの火種を撒いて騒ぎ、互いにいがみ合うのも悲しい。

いったいこの悲しい世の中で、自分は、自分たちは、何をすべきなのか。多くの弟子を抱える宗教指導者のラマに、聞いてみたかった。

『美しい心を保ちなさい。』

ラマからの答えは、とてもシンプルだった。そして、戦争やテロには限らない、誰にでも当てはまる、誰もが本当は教えられずとも知っている答えのように思った。

自分はかつてこの日記で、『世界各地の美しいものを見て、それを誰かと共有することが、旅の目的だ。』という旨をちょっと冗談めかして書いたことがある。それをラマの口から聞き、自分は間違いではなかったんだと追認できたような気がした。

と同時に昨日、『ラルンガルゴンパは、近くで見ると薄汚いのに、遠くから眺めるととても美しい。』という旨の日記を書いた。つまり、美しさの本質を見極める審美眼を磨かなければならない、とラマに諭されているような気もした。

『それじゃ、私は次に、ブラジル人に中国語を教える約束があるのよ。じゃあまたどこかで会いましょうね!』

ラマの館を出て、インファンともお別れする婦人と俺。

もちろん旅する上で、いつだって地元の人との交流は望むところ。しかし、まさかラルンガルゴンパというチベット仏教の聖地で、地元民どころか尼さん、ラマにまで出会えるとは思ってもみなかった。や、出会うだけでなく、質問まで聞いてもらい、チベット名までつけてもらった。これは本当に、現実に我が身に起きたことなんだろうか?なんとなく夢うつつのような気分の世界一周婦人と俺なのであった。

因

インプーと一緒に。彼女が居なければ、ラマとの出会いもありませんでした。彼女曰く『誰でもチャンスがあれば是非ラマに会うべきだと思うの。彼らは人類のプティサファ(珠宝)だから。』

彼女達にご馳走になったお昼ご飯。主食は白米よりもエネルギーのあるアワ。さすが中国出身の彼女達、どれもご飯が進む美味しい味付けです。

彼女達にご馳走になったお昼ご飯。主食は白米よりもエネルギーのあるアワ。左手にあるのが大豆で作られたお肉モドキ。さすが中国出身の彼女達、どれも主食が進む美味しい味付けです。

丹増ジャーツォ。ラルンガルゴンパにいらっしゃるラマの一人です。私の質問は私自身がずっと抱えている問題について『小さな事ですぐに怒って、イライラしたり、八つ当たりしたりしてしまうのですが、それらを避ける方法はありますか』それに対するラマの答えはこうでした。『怒りというのは火山のマグマと同じで見えなくても常にあり、いつか爆発してしまうものです。長期的に改善するなら、shantideva's bodhisaffva way of lifeという本の第6章patient to angerを読むと良いでしょう。短期的な改善には、怒りは熱なので、熱を放出させる良いでしょう』

丹増ジャーツォ。ラルンガルゴンパにいらっしゃるラマの一人です。私の質問は私自身がずっと抱えている問題について。『すぐに怒って、イライラしたり、八つ当たりしたりしてしまうのですが、それらを避ける方法はありますか』それに対するラマの答えは『怒りというのは火山のマグマと同じで見えなくても常にあり、いつか爆発してしまうものです。長期的に改善するなら、shantideva’s bodhisaffva way of lifeという本の第6章patient to angerを読むと良いでしょう。短期的な改善には、怒りは熱なので、熱を放出させる方法を身につけると良いでしょう』でした。『それって、サウナに入ったり、運動したりすることかなぁ?』とインファンに聞いてみると、彼女は『それもいいかもね。私は、息を止めてお腹に力を入れて熱を放出したり、丘の上で叫んだりするよ』と言いました。

インファンと一緒に。別れ際彼女から『二人仲良くね、喧嘩したり浮気したりしちゃダメよ!』と言われました。もしかしたら彼女達は昨日の私達の喧嘩を見透かしていたのかも。いつか日本に行ってみたいと話していた彼女、また日本で会いましょう!

インファンと一緒に。別れ際彼女から『二人仲良くね、喧嘩しちゃダメよ!』と言われました。もしかしたら彼女達は昨日の私達の喧嘩を見透かしていたのかも。いつか日本に行ってみたいと話していた彼女、また日本で会いましょう!

 

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2 thoughts on “2日目 ラマとの縁に恵まれて

  1. またまた素晴らしい出会いをしたもんやね。二人の尼僧の方達、純粋ないいお顔をされてるね。遠くから見ると美しい、近くでみると汚れてる、けれど寄り添ってみれば素晴らしく美しい心があった・・って感じ?本当にいい経験をしたね。結局、別行動も良かったやん!

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    • 美しいってどういうことか、問われてるような気がします。ちなみに1人はラマご自身の写真かな。

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